2013年6月17日月曜日

動き始めたジェネリックスキルの育成と評価 -教育改革の現場から見える成果と課題-

出張報告書(別紙詳細版)
所属・職・氏名
教務課 係長 村山孝道
日時・場所
2013/5/25(土) 河合塾大阪
テーマ
動き始めたジェネリックスキルの育成と評価
-教育改革の現場から見える成果と課題-
目 的
PROGテストに関する情報収集
プログラム
第1部 ジェネルックスキル測定テスト(PROG)のご紹介
第2部 ジェネリックスキル育成・評価の事例紹介
  1. 九州国際大学 山本啓一教授
  2. 高知大学 深見公雄教授
第3部 登壇者への質問を中心とした会場とのディスカッション
参加者数約60~70名
※今回は職場に提出した出張報告書を加工しましたので、出張報告書「もどき」です。
 産業界ニーズGPで実践しているPROGテストについて、情報収集を行った。今回の参加の一番の目的はズバリ山本啓一先生のお話。
 山本先生は30代後半という若さで「一文字学部」(法学部)の学部長になられ、様々な改革を進め、多くの成果を残された方である。自分と年齢が非常に近い(というかたった一歳年上)ということもあり、以前から共感が強く、そして尊敬をしている。

 現在は役職を終えられ、上意下達の改革ではなく、実効性があり、深いコミットメントを前提とした「草の根的改革」に非常に手応えを感じられている(ハマっておられる)ようである。山本先生の取り組みで「良いなぁ」と常々思うのは、それが初年次教育の専門家でも、教育学の教員でもない、いわゆる専門科目教員(プロパー教員)による実践的な改革であることである。プロパー教員と共通教員という区別をずっと続けるべきかどうかという議論はここでは置いておき、逆に、プロパー教員でもなんら問題なく、違和感なく、これまでの価値観を捨てる必要もなく、「普通に」初年次教育改革、(キャリア構築科目改革ともいえるかもしれない)ができる、という実践事例は、初めて聞いたときは目からうろこであった。(プロパー教員は教養教育の視点から見た初年次教育やキャリア構築教育の抵抗勢力になることがありえるからである。)

 また、私自身が初年次教育改革に職員という立場で、学生を巻き込んで挑んでいるが、随所に「さすが研究者」という論理的な視点、具体的な手法が散りばめられており、職員目線や学生目線との違い(強み)を感じさせられた。さて、そろそろ本題の講演の概要に移る。



 企業が求めている人材が「潰しの効く人材(つまり人事異動に耐えうる人材)」である、という表現はとてもわかりやすい。次に、先天的に「地アタマ」の強い人間は別として、普通の人間を「潰しの効く人材(ジェネリックスキルのある人材)」(以下GS人材)育成することが、研究大学でない多くの一般大学、ローカル大学、中小規模大学、低偏差値大学などに求められている、社会的なミッションである、ということもわかりやすい。その機能(普通の人間をGSを人材に育成すること)は、社会的機能として必要な機能であり、重要な機能である。それを多くの一般大学は担っているといえる。
 その方法論としてPROGのリテラシーサイクルの指標(情報収集→情報分析→課題発見→構想→表現→実行)を正科の科目の中で使う、そして、同じ指標でテストして測定し、プログラムの改変指標としても使う、というやり方は、非常に論理的且つ合理的である。また、就職にはプレゼンやグループワークなどでの表現力も問われるが、文章による表現力も問われる。ORではなくANDである。それらを別々に運用、育成するのではなく、全く同じPROGの指標を使い、育成し、測定し、改変する、というプロセスを組まれているのは、初年次の教育プログラム全体の戦略として天晴である。

 本学においても、初年次の教育のトータルデザインが必要である。本学のリソース、例えば、「初年次演習」「書く技法」「基礎ゼミ」「○○とキャリア構築」「京都文教入門」「自己の探求」「フレッシュマンオリエンテーション」等などがあるが、これらを、できるだけ速やかに、「漏れ」「重複」「アンバランス」が無いかチェックし、それを「測定」「分析」「改変」する、というプロセスを構築する必要がある。

 まだ生まれて間もないPROGの、テストとしての信頼性の確信は私自身はまだ持てないが、それはユーザーの増加や項目の見直しなどの作業を経て向上するであろうと期待している。それよりもまず、山本先生が提唱されるように、PROGの指標を活用して教育プログラムを構築することの方に意義を感じた。そうすれば、完全とはいえなくとも、テストによってその教育プログラム自身の「実力」を測定することが可能となるからである。これまでは、「授業アンケート」のみが測定のツールであったが、「それで十分」という大学関係者はいないのではないか。ではどうするか。PROGを用いたカリキュラムや授業のデザイン→測定→分析→改変というプロセスの構築は、今日においては有用な選択肢なのではないか、と感じた。「山本式PROGの活用方法」、とでも呼べるだろうか。

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