2014年5月20日火曜日

大学行政管理学会_中部・北陸地区研究会、近畿地区研究会、大学改革研究会合同企画_第1回若手職員ワークショップ




大学行政管理学会_中部・北陸地区研究会、近畿地区研究会、大学改革研究会合同企画
第1回若手職員ワークショップ


日   時 : 2014年5月17日(土)
場   所 : 学校法人常翔学園 大阪センター
参加者数 : 約120名
ターゲット : 入職1~5年目までの職員




 若い職員達が大学の枠を越えて実行委員会を組み、学会のベテラン勢達と折衝を重ねながら、企画・立案・運営した研修会。彼・彼女たちは見事にやり遂げた。
その、記念すべき第1回ワークショップに講師として呼んでいただいた。大変な誉れだ。


 昨年、大学行政管理学会で、行く先々の分科会でことごとく一緒になった若者がいた。学会の新参にも関わらず単身乗り込み、しかも初参加で初発表。かなり面白い、クレイジーな奴だった。話をすると「モチベーション論」や「リーダーシップ論」など、興味分野がかなり近い。その後もメールでちょくちょくやりとりをしていた。その彼が今回の研修の発起人の一人、中心人物だ。


 もう一人のコアメンバーの女性は、彼女が学生時代からの知り合い。学生FDの世界ではかなり有名人。いやむしろスター的な存在の一人だ。彼女が職員になった時は嬉しく、頼もしい気持ちでいっぱいだった。就職後もいろいろなところでちょくちょく出会っていたが、ある研修の担当をしていた時に襲った「究極のピンチ」を救ってもらった命の恩人でもある。今思い出しても背中から嫌な汗が流れる恐ろしい体験だった(笑)


 この二人に託されたのだ、信頼されたのだ。他の会にも増して気合が入る。(いや、他のオファーもちゃんとしています。。。)
 基本は生まれながらに雑でツメの甘い人間。いつも勢いでやってしまうところだが、今回は事前に何度も二人に確認しつつ、いつになく慎重にコンテンツを作っていった。「参加者は何を欲っするんだろう」「どんな毎日を送っているんだろう」「どんなことが肌感覚として共感されるだろう」と一生懸命考えた。

相談の結果、ターゲットはこうした。

「職員に理想をもって就職し、意欲があって、能力が高くて、でも日々の業務の中で思った通りにならない歯がゆさを感じている、入職5年ぐらいの、転職組でない、プロパーの職員」

 プロパーとしたのは、転職組は苦しい時、前職での栄光にすがることができるからだ。大学業界や職員業界を否定することで自己肯定ができる。しかし、プロパーの職員は職員という職業だけで自分の存在意義を確立しなくてはならないので、転職組より更に自らの職業への深いコミットメントを通じて自己肯定感を獲得する必要があると思っているからだ。

 自分がプロパーである、元々無本位・無目的の縁故採用である、という、普通なら弱みともいえる要素さえも最大限武器として使おうと決めた。

 複雑なコンテンツ、叙述的な表現はできるだけ控え、シンプルにしようと決めた。時間も短いので学術的なところは徹底的に削ぎ落とした。過去の遺産をあわせ、一気に400枚ぐらい作ったパワーポイントの資料を、100枚ちょっとまで絞り込んだ。

 話したいことはキリがない、止めどなく出てくる。それを必死に絞る。絞る作業は難しい。間を間引けばいいというものではない。間引けばストーリが変わる時もある。そうなると次々に入れ替え、パズルになる。迷子になる。しんどい作業。だがこの作業が贅肉をそぎ落としていく大切な作業だ。



 私の講演は前座だ。本番は参加者が取り組むグループワーク。2つのセッションを通じて、10数名とみっちり、がっちりと出会うようにデザインされている。「単なる名刺交換だけの薄い関係性で終わる会にはしたくない」という主催者の執念だ。

 懇親会に80人が参加した、というのは素晴らしいことだ。2次会でも2-30人はいた。話し足りず3次会に言った連中もいた。このことをとっても会は大成功だったと言えるのではないか。主催者の若者たちの力だ。

 うかうかしているとぶち抜かれて、あっという間に置いて行かれる。連中はかなり手強い。
そうはさせんぞ!という気持ちになった。また今週も頑張ろう。


大学職員としてのキャリアデザイン(PDF)

2014年3月11日火曜日

学生FDサミット2014冬 「あなたが作る、大学最高大作戦~めざせ意識改革~」

出張報告書(別紙詳細版)

所属・職・氏名
教務課 係長 村山孝道
日時・場所
2014/3/7(金)~9(日)   於;東洋大学
テーマ
学生FDサミット2014冬
「あなたが作る、大学最高大作戦~めざせ意識改革~」
目 的
①諸大学の学生FD活動の情報収集を行う
②諸大学の教職員・学生と情報交流ネットワークを作る
プログラム
<初日>
■学生FD概論Ⅰ
■今が旬!学生FD活動取り組み紹介(日本大学・筑波大学)
■分科祭の部
■懇親会
<二日目>
■学生・教職員合同テーマ別しゃべり場
■学生・教職員合同テーマ別しゃべり場成果報告会
■ファイナル「学生FD活動の方向性を問う」
■サミットエンディング

<はじめに>
 3年前、関東初学生FDサミットを開催すべく法政大学の学生・教職員が準備を進めていた。しかし、サミット前日の東日本大震災によって、その努力は水泡と帰した。前日入りすべく東京に移動していた本学の学生数名も、新幹線の中、レジャー施設のレストラン、最寄りの駅、ホテルなどに閉じ込められ、パニックの中情報が得られず、電話もつながらず、唯一の通信手段であったSNSを駆使してやりとりし、不安な一夜を過ごしたことがつい昨日のことのように思い出される。
 あれから3年、ついに学生FDサミットが東日本で開催された。今では大学院生となった、当時を知り、当時の企画の一員であった学生が中心となり、東洋大学での開催にこぎつけたのである。「西高東低」と言われる学生FD活動。十分な参加者が得られるだろうかという不安の中で企画がなされたが、蓋をあけると65大学という過去最高の大学数からの参加を得るに至った。執念を持ってこの3年間、東京開催に向けて頑張った東洋大学のリーダー学生には大いに敬意を表したい。
 今回のサミットがこれまでと違う一番大きな点は、実行委員会方式をとっていることだと思う。東洋、青山学院、嘉悦、創価、横浜国立、法政、明星の8大学の学生・教職員が実行委員会を形成して作り上げた。大変な努力があったことであろう。当日の運営での他大学教職員の動きを見ると、このサミットへの相当なアイデンティティとコミットメントが育まれていることが見て取れた。これほど、他大学の教職員が「お客さん」ではなく、右に左に走り回っているサミットはこれまで無かったのではなかろうか。以下、まずはサミットに関する基本的な数値情報をまとめる。

<基本的な数値情報>
参加者数    : 312名
参加大学数   : 65大学
本学からの参加 :11名(内2名職員。申し込みは12名で1名は体調不良で欠席。)
※実際の参加者数や教員・職員・学生数比率などは後日集計されると思われる。
 
 UNGL(大学間連携GP)のサイパン研修直後であったこと、卒業していく先輩のための卒業記念パーティーの準備、FSDブックレットの編集作業、また遠方であることなどなど諸般の事情で、参加者数は昨年夏の29名(日本一)から大幅に減少した。それでも、申し込みベースの12名は、単独大学からの参加者数としては、岡山理科大学18名、日本大学16名についで3位であった。学生は、UNGLの経費を活用し、マイクロバスで参加した。




 サミットへの参加はFSDプロジェクト(及び中央執行委員会)にとって以下の7点の効果がある。

  1. 発表の場
    1. 「試合」の場、とも言える。本番に向けて「練習」(事前準備)が行われる
    2. 「試合」を控えた「練習」時が最も危機意識が高まり、成長する
    3. 全国の同年代との「他流試合」であるので、気合が入る
  2. 交流の場
    1. ほとんどの学生が初めて他大学生と知り合う
    2. 知りあう学生は大学の規模も多様、学問分野も多様。さらに、全国からの学生。
  3. 意識向上の場
    1. 新入生はこれからの大学生活に向けて意識向上(生徒から学生)する
    2. 上級生はマンネリ化しつつある日常の活動に、刺激を得てもっと上を目指すようになる
  4. 帰属意識涵養
    1. 事前学習によって大学の基本情報を学ぶ
    2. 他大学と交流することで自大学を知り帰属意識が芽生える
    3. 名刺を作成する中で「京都文教代表」の意識が芽生える
  5. 新規メンバー獲得の場
    1. サミットに参加してFSDの活動に参加する学生が毎年いる
  6. チームビルディングの場
    1. 発表の準備などを通してチームの結束力が上がる
    2. 団長・副団長を作り、事前準備から団体行動をすることで結束力が上がる
    3. 団体(主にFSDと中央執行委員会)をこえたチームビルディングができる(その後の活動に活きる)
  7. 教・学・職協働の場
    1. 荷物の準備、運搬、事前学習、各種アドヴァイスなどを通して本学職員と面識を持つ
    2. 他大学の教職員と出会い、本学の教職員との違いを感じる
    3. 他大学の教職員と学生との関係性を知り、本学との違いを感じる

以下、参加プログラムについてそれぞれ簡単にコメントを行う。

■学生FD概論Ⅰ及び■今が旬!学生FD活動取り組み紹介(日本大学・筑波大学)
 6.5万人、90学科を要する超巨大大学の日本大学。キャンパスや学部が、それぞれ独立大学のような様相を呈しているのが特徴である。よって、今、日本大学に必要なのはサミットに参加して日本中の大学生たちと出会うことよりも、むしろ同じ大学内の他学部や他キャンパスの学生と出会い、理解し合うことである。サミットはそのための情報収集の場ということになる。今回、第一回大学内サミット「CHAmmiT」(参加者167名)についての報告があった。良いアプローチだと思う。誰もが納得できる方向性と方策だ。今後も当面は90学科へのアプローチを続け、多くの学科からの学生・教職員を集め、「対話の場」を生む仕掛けを続ける模様である。規模が大きいだけにこのミッション達成にはしばらく時間はかかることだろう。
 日本大学とは違い、筑波大学は4×2キロメートルの広大な敷地を要するワンキャンパスにすべての学科が入っている。郊外に作り上げられた、典型的なアメリカリベラルアーツ型の大学であり、「学問や真理の探求、研究」の色彩が濃い。学部は無く、科目は「学類」ごとに分けられる。数千という膨大な科目が開講されており、尚且つ、学生にはその膨大な科目を学際的、横断的に履修することが期待されている。しかし、その膨大な科目の情報を効果的に得る術が用意されておらず、絵に描いた餅になっている。そこで筑波大学の学生FD活動の柱として、各学類を専攻する学生がシラバスとは別に「おすすめ」の科目をピックアップ、教員ヒヤリングを含め、学生の視点で授業を紹介し、他の学類を専攻する学生に紹介する冊子を作る活動を行っている。
 同じ大学にもかかわらずキャンパスがバラバラで、「全国の学生たち」よりもむしろまず先に「同大学の他キャンパスの学生たち」と出会うことを目的としている日本大学と、キャンパスは一つでも膨大な開講科目の中で溺れそうになっている学生を救済しようという筑波大学の事例は、興味深いものであった。
 本学は、上記2大学が抱える問題に対してエネルギーを割く必要は全くない。もっと現場に、もっと深く、もっと学内に幅広く、アプローチできる。学生FD活動において、「小規模メリット」は随所に見られるが、今回の報告を受けて改めて学生FD活動においては本学のサイズを「強み」に変えることができる、と感じた。

■分科祭の部
(1)アクティブラーニング(レクチャー) 講師:三浦真琴氏(関西大学教育推進部教授)
「アクティブラーニングは単なるスキルのことではない、哲学が必要な営みのことである」という。アクティブ・ラーニングの反意語はパッシブラーニング(受動的学習)である。本来、ラーニングはアクティブな営みである。

「学習とは学習者が能動的に意味を探求する営みである。知識を受動的に得るのではなく、それを構築する営みである。その知識は経験に寄って形作られるものであると同時に、これから先の経験を構築していくもととなるものである。(American Assosiation for Higher Education 1998)」

 では、LearningをActiveでなくしているのは何か。それは、「知の断片化」「知の移転=教育」というスキーマである。「知の断片化」とは、たとえるならば「ステーキを見せて牛の絵を書けといっても書けない」ような状態を指す。社会、歴史、文化、その学問の全体系、そして日々の生活と関連付けを行いながら「意味」だけではなく「意義」を同時に伝え、実感させるべきである。部分の意味だけを教え、記憶した「意味」の量や解答の「正確」さだけをはかる教育をしていると当然「受け身の学習者(パッシブラーナー)」が育つ。
 同じように、「意義」ではなく「意味」を伝達する、即ち「知の移転」が教育である、と思っている教育者がいかに多いかということが今日の課題だ。そこにはその学問や、その授業に対するエモーショナルな欲求は生まれにくい。だからこそ「アクティブラーニング」という哲学を使って教育のパラダイムをシフトする必要がある、という。大学の教員が保証すべきは、知の移転ではなく、知の正当性でもなく、「学生の知への接近」である。教員はTeacherではなく、もはや、「デザイナー」「カリオグラファー(振付師)」であるべきである。教員は学びを保証するために「Teaching(教えること)」を見直す必要がある。心がけるべきことは「How to coach, What not to teach.」であると言う。ゴールは丸暗記をさせることではない、ということにはすべての教員が共感するのではないか?ゴールは、学生を「学習者」に育て、限られた時間で教員自身が教えたことよりも、もっともっと多くのことをこの後の人生で自ら学んでくれる人材に育成することではないか?教員は「教える」のではなく、「問」を発する、そして、最終的に学生が自ら「問」を作れるようにCoachする、それが教員であり、あるいは人生の先輩としての職員の職務とも入れるのではないか。
 知の獲得モデルは以下の3つだ。

勉強モデル・・・問と答えがパッケージ
学習モデル・・・問は教員が与え答は与えない
学問モデル・・・問を自分で発見する

 企業が大学に、「いまどきの学生は指示待ち人間が多い。指示をすればちゃんとやるが、指示しないと何もしない。大学では自律的に動ける学生を育成して欲しい。」という。これは即ち、勉強モデルと学習モデルしかできていない、という結果ではないだろうか。

(2)僕の私の学生FD活動~これから大学をよりよくしたいあなたへ~ (立命館大学加藤氏、筑波大学●●氏)
 予算削減、林立する様々な団体の中で学内でのプレゼンス低下という問題を抱える大規模大学の学生FDでは、「学生FD自身の成長」視点だけでは不十分で、目に見える定量的な「大学全体への成果」を大学から求められるつつあるとのこと。そのために学生FDスタッフは「苦しい」と言いながらも、諸活動を行い、また企画し、成果を生もうとしている。自分たちの「居場所」を守るため、ということなのだろうか?
 気持ちや論理はわかるが、それなら業務で教職員がやれば良いのでは、と思う。あるいは有給にするということもあるだろう。ボランティアに求めるべきものではないように思える。
 学生は学生FD活動をしに大学に来ているのではない。勉学をしにきているのだ。しかし、学生FD活動は、①扱うテーマが大学の本丸、教育そのものであり自治会やクラブ・サークルとは違う②そのために大学・教職員との連携がはるかに強い③よって活躍すべきフィールドは全学レベルでありステージが華やかでその分ハードルも高い④ハードルが高い分スキルアップや知識・情報を得ようとする作用があり学生が成長する⑤尚且つ全国に広がりを見せ大学間交流、学協会での発表など更に一歩ハードルの高いステージがある、という特徴がある。学生がそのステージ・フィールドで自己実現のために活躍することが、大学の活性化や大学の教育環境改善に繋がるのである。定量的に成果をはかり、大学に提出することを目的にしてしまった学生FDに、どれだけの学生が魅力を感じ、活き活きと活躍してくれるのだろうか。メンバーを集められるのだろうか?私なら絶対にそのような活動には参加しないだろう。
 本学の学生FDは現時点でその対極にある。学生の自己実現、自己成長を主眼に置き、尚且つそれが大学にもメリットをもたらす、という、「自利即利他」の精神を貫いてきた。それが本学のFSDの最大の強みだと思う。



<二日目>
■学生・教職員合同テーマ別しゃべり場、■学生・教職員合同テーマ別しゃべり場成果報告会
 小樽商科大学、熊本学園大学、岡山大学、九州共立大学、龍谷大学、日本大学の学生6名と同じグループでしゃべり場を行った。テーマは「大学生論」。この教職学、大学間、学年間、学問間バラバラの人々が「大学人」として集うしゃべり場はサミットの目玉だ。このメンバーで3時間弱を共に過ごした。自分自身としては、自分が議長にならないことは当然だが、その中で話しすぎる者、話を遮る者、話をちゃぶ台返しする者に対する「介入の間合い」を今回の自己テーマに置いて参加した。種々実験を試みつつ、誰も悪者を作らず、しかし議論を促進させ、小さな声が拾われるような、場作りを「フォロアーの立場で」実践した。個人的に大変有意義な時間を過ごせた。
 議論はテーマが大きいことから大いに拡散、収集はなかなか付かなかったがそれはそれで良いだろう。最後は全員初めて出会った全国の「同志達」と一緒に写真をとって、名残惜しく別れた。

■ファイナル「学生FD活動の方向性を問う」
 日本大学でゼロから学生FDを立ち上げ、まもなく卒業する女学生が思いを語った。自分が成し遂げられたのは、丁度大学のFD活性の動きとたまたまタイミングが合ったため。大学との協働なしには大きなことはできない、というのが彼女の結論である。たしかに、90学科あるマンモス大学で一人の女子学生が立ち上がって伝説を作り上げる、というのは並大抵のことではないだろう。
 それにしてもこの女子学生、実行力、他者への配慮、目配り気配り、企画力、そして何より高いマインドなど、やはり並外れているものを感じる。このような学生を大学職員業界にどんどんリクルートしたい、と感じた。

■サミットエンディング
 サプライズとして立命館大学の沖裕貴先生が登場された。沖先生はいわずとしれた高等教育会のメジャーリーガーで、立命館大学の教育開発支援センター長。大学教育学会理事、日本教育情報学会理事、日本高等教育開発協会理事などを歴任されている。得意領域はピアサポーター制度である。その沖先生が、学生FDサミットのエンディングにサプライズで登場され、「ピアサポーターと学生FDの類似点と相違点」という趣旨で講演をされた。学生FDの学生たちが「疲れた」とよく言うことに対し、「定義がよくわからない」「活動の範囲がよくわからない」というところが原因ではないか、という指摘をされた。これは大いに共感できる。サミットに参加する学生は非常に多種多様で、自治会、学祭実行委員、サークル、イベント企画団体などなど、様々である。「いっそFDの呪縛からはなれ、学生スタッフで良いのでは?」というご提案はその点でごもっともである。有給・無給・単位の有無は様々でも、大学で活躍する学生をすべて学生スタッフと呼ぼう、ということである。これは面白い。その上で、

(1)学生業務スタッフ・・・大学から委託された業務や調査研究を行う
(2)ピアサポーター・・・学生同士(peer)が専門性を持つ教職員の指導のもと、仲間同士で援助し学び合う業務に従事するスタッフ
(3)学生FDスタッフ・・・FDに特化した学生スタッフ

という風に定義づけられた。現在(1)(2)(3)をそれぞれの大学の特徴の中、単位や給料がない中でそれぞれ意義を見出しつつ活動しているのが学生FD達である。その学生たちを、業務なら(1)で給料をもらえ、(2)は学生FDの領域ではない(のでしてはいけない)、という風に受け止める事が出来る。この事については、現場での体験(いや体感)上、共感することが難しいと感じる部分がある。それは、果たして、(3)だけを目的に、学生は「やりたい」といって集まるのだろうか?もし集まるとしたらそれはどんな学生たちなのだろうか?学生の顔が浮かんでこない。それが直感的な感想である。教職員だけでは限界がある、なので学生の参画を、と言って始まった学生FDに、学生を本当に動員できるのだろうか?というのが率直な気持ちである。絵に描いた餅になるのではないか、という懸念である。
 本学は、(1)~(3)に自己実現を求めて学生が集まってくる。それぞれの学生の求めているものは微妙に違っている。(1)を求める学生も(2)寄りの学生も(3)の学生もいる。しかし、最終的なゴールを「FD(教育改善)」に位置づけることだけを徹底し、例えばFDの学生が「体育祭をやりたい」といったらそれは違うよ、と伝える、ということだけを行ってきた。
 他大学の教職員の多く(いや殆どと言ってもいいのでは?)の方々から、「京都文教のFSDは良いですね、うらやましい」と言っていただける。学生が、自己実現のために集い、それを大学はとことんサポートし、そして、その恩恵(FD講演会講師、就業力WG勉強会、京都文教入門、自己の探求、リーダーズキャンプ、国際交流フェスタ、プロジェクトPRフェスタ、などなど)を大学が受けているからである。学生もその自負があり、サミットでは他大学生にさんざん「自慢」をしてくる。そして毎年のように「京都文教に編入したい」と言ってくれるブランド大学の学生がいる。これで、良いのではないだろうか。そう思えてならない。

<まとめ>
 学生FDサミットは2009年から始まり今回で8回目。当初はほとんどの時間が「しゃべり場」であった。丸二日、しゃべっていた、という印象だ。その時は、とにかく仲間を作って、お互いの悩みや強みを「深く狭く」知りあう場であった。昨今は学会的な要素が強くなり、ポスターに美しくまとめられた活動を段取り良く見て回り、多くの情報を短い時間で獲得できるようになった。そのメリットは確かにある。しかし、ポスターやミニ発表でコンパクトにまとめられた内容からは、その背後のメンバーの心の葛藤や苦難、やっと生まれた難産のアイデアがいったいどんなキッカケで結晶化したのかなどの「ものがたり」は全く見えない。そこが昨今のサミットの弱みであろう。参加学生にはその弱みを伝え、「だからこそ仲間を作って、懇親会やその後のメールや電話でのやりとりでより生々しい情報を得よう」と伝えている。
 それでも、65もの大学が一箇所にあつまり、次々に出会える機会など他に無い。今後もどんどん、学生のSD(Student Development)と、職員のSD(Staff Development)の場として活用していくべきであると考える。願わくば本学にも、高等教育やFDに感心のある教員を生み出し、教員の参加者を得たいものである。



以上

2013年6月17日月曜日

動き始めたジェネリックスキルの育成と評価 -教育改革の現場から見える成果と課題-

出張報告書(別紙詳細版)
所属・職・氏名
教務課 係長 村山孝道
日時・場所
2013/5/25(土) 河合塾大阪
テーマ
動き始めたジェネリックスキルの育成と評価
-教育改革の現場から見える成果と課題-
目 的
PROGテストに関する情報収集
プログラム
第1部 ジェネルックスキル測定テスト(PROG)のご紹介
第2部 ジェネリックスキル育成・評価の事例紹介
  1. 九州国際大学 山本啓一教授
  2. 高知大学 深見公雄教授
第3部 登壇者への質問を中心とした会場とのディスカッション
参加者数約60~70名
※今回は職場に提出した出張報告書を加工しましたので、出張報告書「もどき」です。
 産業界ニーズGPで実践しているPROGテストについて、情報収集を行った。今回の参加の一番の目的はズバリ山本啓一先生のお話。
 山本先生は30代後半という若さで「一文字学部」(法学部)の学部長になられ、様々な改革を進め、多くの成果を残された方である。自分と年齢が非常に近い(というかたった一歳年上)ということもあり、以前から共感が強く、そして尊敬をしている。

 現在は役職を終えられ、上意下達の改革ではなく、実効性があり、深いコミットメントを前提とした「草の根的改革」に非常に手応えを感じられている(ハマっておられる)ようである。山本先生の取り組みで「良いなぁ」と常々思うのは、それが初年次教育の専門家でも、教育学の教員でもない、いわゆる専門科目教員(プロパー教員)による実践的な改革であることである。プロパー教員と共通教員という区別をずっと続けるべきかどうかという議論はここでは置いておき、逆に、プロパー教員でもなんら問題なく、違和感なく、これまでの価値観を捨てる必要もなく、「普通に」初年次教育改革、(キャリア構築科目改革ともいえるかもしれない)ができる、という実践事例は、初めて聞いたときは目からうろこであった。(プロパー教員は教養教育の視点から見た初年次教育やキャリア構築教育の抵抗勢力になることがありえるからである。)

 また、私自身が初年次教育改革に職員という立場で、学生を巻き込んで挑んでいるが、随所に「さすが研究者」という論理的な視点、具体的な手法が散りばめられており、職員目線や学生目線との違い(強み)を感じさせられた。さて、そろそろ本題の講演の概要に移る。



 企業が求めている人材が「潰しの効く人材(つまり人事異動に耐えうる人材)」である、という表現はとてもわかりやすい。次に、先天的に「地アタマ」の強い人間は別として、普通の人間を「潰しの効く人材(ジェネリックスキルのある人材)」(以下GS人材)育成することが、研究大学でない多くの一般大学、ローカル大学、中小規模大学、低偏差値大学などに求められている、社会的なミッションである、ということもわかりやすい。その機能(普通の人間をGSを人材に育成すること)は、社会的機能として必要な機能であり、重要な機能である。それを多くの一般大学は担っているといえる。
 その方法論としてPROGのリテラシーサイクルの指標(情報収集→情報分析→課題発見→構想→表現→実行)を正科の科目の中で使う、そして、同じ指標でテストして測定し、プログラムの改変指標としても使う、というやり方は、非常に論理的且つ合理的である。また、就職にはプレゼンやグループワークなどでの表現力も問われるが、文章による表現力も問われる。ORではなくANDである。それらを別々に運用、育成するのではなく、全く同じPROGの指標を使い、育成し、測定し、改変する、というプロセスを組まれているのは、初年次の教育プログラム全体の戦略として天晴である。

 本学においても、初年次の教育のトータルデザインが必要である。本学のリソース、例えば、「初年次演習」「書く技法」「基礎ゼミ」「○○とキャリア構築」「京都文教入門」「自己の探求」「フレッシュマンオリエンテーション」等などがあるが、これらを、できるだけ速やかに、「漏れ」「重複」「アンバランス」が無いかチェックし、それを「測定」「分析」「改変」する、というプロセスを構築する必要がある。

 まだ生まれて間もないPROGの、テストとしての信頼性の確信は私自身はまだ持てないが、それはユーザーの増加や項目の見直しなどの作業を経て向上するであろうと期待している。それよりもまず、山本先生が提唱されるように、PROGの指標を活用して教育プログラムを構築することの方に意義を感じた。そうすれば、完全とはいえなくとも、テストによってその教育プログラム自身の「実力」を測定することが可能となるからである。これまでは、「授業アンケート」のみが測定のツールであったが、「それで十分」という大学関係者はいないのではないか。ではどうするか。PROGを用いたカリキュラムや授業のデザイン→測定→分析→改変というプロセスの構築は、今日においては有用な選択肢なのではないか、と感じた。「山本式PROGの活用方法」、とでも呼べるだろうか。

2013年6月11日火曜日

大学教育学会 - 教育から学習への転換 - _ 2013_6_1

出張報告書(別紙詳細版)


所属・職・氏名
教務課 係長 村山孝道
日時・場所
2013/6/1(土)~6/2(日) 東北大学
テーマ
大学教育学会
統一テーマ「教育から学習への転換」
目 的
①FD・IR等高等教育政策の情報収集を行う
②ラウンドテーブル 「学生と共に進めるFD」 において話題提供を行う
プログラム
6/1(土)
 ラウンドテーブル
 基調講演
 公開シンポジウム
6/2(日)
 自由研究発表
参加者数631名
<はじめに>
 今年度の大学教育学会の統一テーマは「教育から学習への転換」であった。このテーマの元、全体会として基調講演と3つの事例報告及びシンポジウムが行われた。参加者は631名であった。また、ラウンドテーブルと自由研究発表に参加をした。
<ラウンドテーブル 「学生とともにすすめるFD」>
企画者:木野 茂(立命館大学、代表)、服部憲児(大阪大学)、梅村 修(追手門学院大学)、村山孝道(京都文教大学)、天野憲樹(岡山大学)、吉田 博(徳島大学)
報告者:木野 茂(立命館大学)、天野憲樹(岡山大学)、杉原真晃(山形大学)、梅村 修(追手門学院大学)、村山孝道(京都文教大学)
司会者:木野 茂(立命館大学)
 2001年に岡山大学で始まり、FDの義務化によって一旦国立大学を中心に広がった学生FD活動は岡山大学を除いて一旦終息した。その後2006年度から立命館大学で始まり、2009年度から学生FD活動を全国に広めることを目的に始まった学生FDサミットの誕生により、一気に全国に広がった。現在、サミットには3-400名の参加者が有り、学生FDを持つ大学も60大学に達した。
 学生FD活動は、全国拡大の第一段階の目標を達成し、現在、質の向上や各大学への貢献が問われる第二段階に入ったといえる。 第一段階の全国拡大の成功により、各地域での交流やイベントの開催が増加した。
 今回はこの「地域交流型FD」の事例報告を受けた上で、学生FDの第二段階について議論を行った。以下は特記事項等。
  1. 学生FDフォーラムi*Seeにおける「交流」の意義と展望(岡山大学)
  1. 2005年から始まった当時は珍しい全国フォーラム
  2. これまでに「学生力 教育改善」「大学維新を目指すホンネの話し合い」「Lerning Tips & Teaching Tips革命」「大学の意義について考える」などのテーマが取り上げられてきた。
  3. もともと「学生交流」に主眼が置かれており、「アイスブレイク」に伝統的に力を入れてきた
  4. 現在、学生だけでなく教職員との交流、大学間の交流も定着してきた
  5. しかし全国に類似のイベントが生まれ、テーマや内容の重複などが生まれてきている。
  6. また、イベントの増加に伴い、移動コストが増加してきた。移動コストを考えると、地方大学として今後見直しが必要である。
  7. 今後の可能性として、FacebookやUstreram,Skype、LINEなどを利用したた、ウェブによる活動も検討して行きたい。
  1. FDネットワーク"つばさ"における「学生とともに進めるFD」(山形大学)
  1. 北海道、東北、関東の大学と連携し、2004年から「学生FD会議」を実施している。
  2. ”つばさ”は平成24年度文部科学省「大学関連系共同教育推進事業」に採択された。
  3. FDやIRなどについて議論している。
  4. ”つばさ”によるFDの特色は①連携校および自校の教育の活性化に加え、「②地域社会の活性化と教育力の向上」があることであり、教職学の三位一体に「地域社会・ステイクホルダー」を加えた四位一体であることである。
  5. 机上の論理ではなく地域と関わることが「本気」に繋がり「成長」に繋がる。
  6. 学生FDについては様々な批判がありえる。そもそも教育力の向上は大学の仕事で学生の仕事ではない。大義がいる。
  7. ”つばさ”では、学生は協力者で貴重な時間を割いてもらっている存在、教員だけではできないことを犠牲と労力を割いてやってもらっている、よって何かプラスになることを提供しなくてないけない、というスタンスに立っている。
  8. 学生FD活動をうちに閉じるのではなく、地域社会への貢献を目的に開くことで、学生の成長、「市民」としての経験と成長に繋がることを目指している。
  9. 「地域連携型FD」と定義している。
  1. 大学間連携「地域FD活動」のもたらすもの~「学生FDのWA」の取り組みを例に~(追手門学院大学、京都文教大学)
  1. 「試合」や「本番」の無いところに真剣な「練習」は無い。
  2. 年に2度の学生FDサミットを「全国大会」と位置づけるならば、地域の学生FD活動(行事)は「地方大会」と位置づけられる。
  3. そのような地方大会として2大学で交互にイベントを開催してきた。現在は全国から参加者が来るようになっている。
  4. 「WA」の特色は、単なる交流や「しゃべり場」だけではなく、研修(SD=Student Development)と位置づけているところである。
  5. 既存の学術・知識体系を学ぶ、inputの場である。
  6. 第4回は京都文教大学で開催した。そこには下記の特徴をもたせた。
  1. 内容のハイブリッド
  1. ファシリテーション・・・盛り上げる
  2. 広報・・・伝えきる
  3. ゲーミフィケーション・・・その気にさせる
  1. 講師のハイブリッド
  1. プロの講師の講習もあるが、学生が講師となる
  2. 「Teaching」が最大の「Learning」
  1. 企画・運営はプロジェクト・マネジメント(PMBOK)を導入
  1. 偶然から必然へ
  2. 感情論から方法論へ
  3. 個人のセンスから組織の力へ
 初日の午後は、「教育から学習へ」という今学会の趣旨の基幹行事として、①米国「授業デザイン」の専門家の基調講演を軸に、②国際的なカリキュラム論の動向、③国際的なオンライン学習環境の動向、④ラーニング・コモンズやアクティブラーニングの事例という3つの事例報告およびディスカッションが行われた。
<基調講演>
タイトル : 「Designing courses for significant learning(意義ある学習を目指す授業設計)」
講師   : L.Dee Fink Ph.D. (高等教育コンサルタント)
 まず、高等教育における昨今の課題として下記を提示された。まるで日本の高等教育への指摘のようであるが、これは米国の高等教育にたいする指摘であり、驚かされた。
 ①学習しても知識として定着しない
 ②職業で発揮すべき行動への備えが不十分
 ③職業、社会において変革をもたらすリーダーとなる備えができていない

(所感)
 この課題を克服するためには「教授中心」から「学習中心」へのパラダイム・シフトが必要であり、その方法論としてコースデザインのノウハウがある。詳細は割愛するが、ノーベル物理学賞受賞者カール・ワイマン博士の最近の研究(『サイエンス』誌 2011年5月13日号、862-864ページ)の実験の事例報告は興味深い。
 物理学のクラスを2グループに分け、一つは従来型授業、もう一つは新学習法を「1週(3コマ)のみ」実施した。新学習法では、グループで問題解決に取り組み、それに対して迅速なフィードバックが与えられた。その結果、出席日数:57%→75%、授業への積極的関与:45%→85%、テスト成績も大幅向上という結果が出た。15週(45コマ)の内のわずか1週(3コマ)でも大きな変化があった、という事例である。
 つまり、「教育から学習へ」あるいは「教授中心から学習中心へ」のパラダイムシフトとは、「何を教えるか」ではなく「どのように教えるか」または「どんな『場』を用意するか」というところにシフトする、ということである。
 この考えに基づけば、今後の教員採用は「何を教えられるか」(知識量)を測るのではなく、「どのように教えられるか」(教授法、場づくりの力、マインド)を測るようにシフトをしなくてはならない。FDは、「既に入職しているスタッフの能力開発」として行われてきたが、今後は教授法において「開発の必要がない、あるいは自己開発能力のある」人材を得る(人事方針のパラダイムシフト)が必要ではないだろうか。
<シンポジウム>
 3名の専門家から事例報告があり、そののちにディスカッションが行われた。
  1. 教育から学習への転換を支えるのも-カリキュラムの観点から-
講師:京都大学高等教育研究開発センター 松下佳代氏
  1. カリキュラム概念の重層性
カリキュラム研究では、 カリキュラムは「学習者に与えられる学習体験の総体」であり、「教育課程」よりも広義であり且つ、重層的な存在である。
制度化されたカリキュラム
国家・行政機構
計画されたカリキュラム
大学・部局
実践されたカリキュラム
教員
経験されたカリキュラム
学生
 「経験されたカリキュラム」を視野にいれるならば、フォーマルカリキュラムだけでなく、補助的なカリキュラム(cocurriculum)まで含めて把握する必要があり、その努力がなされている。(NSSE,JCIRPなどの学生調査やポートフォリオ評価など)。この情報を元に行うのが「カリキュラムマネジメント」である。
  1. カリキュラムの体系化
 カリキュラムは①グローバル化、②社会の流動化、③テクノロジーの発展、によって変容している。
伝統的アプローチ
新しいアプローチ
教員中心
学生中心
カバーすべき内容の存在
学習成果(アウトカム)の明確化
インプット志向のカリキュラム
アウトプット志向のカリキュラム
個々の学生分野のためのプログラム
個々の学問分野、学際領域、統合領域などのためのカリキュラム
伝統的キャリア(完了、教師、聖職者など)を想定
学問的・職業的キャリアの明確化
知識と内容への焦点化
能力(コンピテンス)への焦点化
 Turningプロジェクトは、欧州においてボローニャ・プロセスに向けて各国、各大学のカリキュラム(教育構造とプログラム)をturing(調整)するプロジェクトである。現在ここで作られたアプローチは世界中に広がっている(53カ国)。これにより、国家間で資格・学位の比較・互換や蓄積が可能となる。
  1. カリキュラムの解体
 テクノロジーの普及による大きなムーブメントがある。MOOC(Massive Open Online Course)の、授業のオンライン上での無料公開の広がりがそれである。 スタンフォードやMIT、ハーバードなどが先駆的に開始した。日本では東京大学と京都大学が始めた。今後は正式な単位認定、修了者を認定して証明するような試みも始まる。科目の質保証はそれぞれ単体でなされ、ここでのカリキュラムとは「学生の学んできた道筋」(履修履歴)としての存在となる。

  1. 大学カリキュラムの行方
 講義授業はかなりの程度オンライン授業に代替可能と認知されるようになるのではないか。今後は身体を使った直接経験や他者との対面インタラクションなどの意義が増すだろう。
(所感)
 グローバルなカリキュラム変容(Turningによる教育構造とプログラムの調整→統一化)や爆発的な広がりを始めた無料オンライン授業は驚かされた。日本は今後どのような対応をするのか、その中で本学がせねばならぬことはあるのか、無いのか、今後注視していきたい。
  1. 大学における対面空間とオンライン学習環境
講師:東京大学大学院 情報学環 山内祐平氏
  1. MOOCについて
 主なMOOCのプラットフォームは以下である。すべて約1年以内の出来事である。
名称
設立時期
設置主体
主な参加大学と提供科目数
登録者数等
Coursera
2012.4
スタンフォード大学の教員2名が設立した企業
世界62大学
223科目
330万人
edX
2012.4
MITとハーバードが約6000万ドルを投資して共同設立した非営利組織
世界27大学
50科目
90万人
Udacity
2012.2
スタンフォード大学の教員3名が設立した企業
スタンフォード・ヴァージニア他の教員個人
22科目
40万人
FutureLearn
2013春予定
英国オープンユニバーシティが設立する非営利組織
オープン・ユニバーシティ他
英国12大学
 スタンフォードで当初テストでオープンした一つの授業の登録者はなんと15万人。そして、そのトップ500位にスタンフォードの学生はランクインできなかったとのこと。ウルグアイやエストニアなど、スタンフォードにはアプローチできない苦学生且つ天才が上位をしめたとのこと。kれで、世界には様々な理由でトップ大学にアプローチできないが、優秀な頭脳を持つ人材がまだまだいる、ということがハッキリと証明された。
  1. 反転授業
 伝統的授業が、①導入5分②宿題確認20分③講義45分④応用課題20分、というものであったが、これを、①導入5分②宿題の確認10分③応用課題75分に変えるのが反転授業(Flipped Class Room)である。オンラインとオフラインを組み合わせる「Brended学習」の一つとして「反転授業」は位置づけられる。教室内では応用課題に傾注し、教室外にインプットの場を設けるというものである。米国での実験では出席率、学習態度、成績が大幅に向上する。教室外には、オンライン及びラーニングコモンズ・プロジェクトルームなどが考えられる。学習(経験)を元に内省を促すための場を用意することで知識定着をはかる。
→ これは理想ではあるが、実際には学生にとって負担の純増。実現性に疑問あり。
(所感)
 今後は履修証が就職活動に使われることは想像に易い。また、MOOC周辺に企業と優秀な人材をマッチングさせるビジネスが生まれることも考えられる。つまり「高等教育に巨大な新市場が生まれる可能性」が見えた。現在及び近未来に、世界的なトップ学生の争奪戦が始まり、オンラインサービスはフロントランナーの勝者総取り、大学ブランド価値向上と入学者誘導が繰り広げられるとかんがえられるだろう。
 日本はその中で何ができるのか、何をすべきなのか。また、本学はそのストーリーの中にプレイヤーとして存在するのか、完全に蚊帳の外なのか。もしかしたらそこに存続のヒントがあるのか。当面、注視していきたい。
  1. 教授から学習への転換~教員・職員・学生の認識の共有をどう実現するか~
講師:立命館大学 教育開発推進機構 沖裕貴氏
  1. 立命館大学R2020
 2010年に作成した学園ビジョンの中で、学習者中心、双方向授業、ピアサポート質向上などをうたった。全学協議会確認文書にも同様の記載をしている。(この文書は4年に一度更新するが、学生もいれて会議を開催している。)
 ラーニングコモンズである「ぴあら」の活用事例、ピアサポーターの活動事例についての報告が行われた。
(所感)
 立命館大学はピアサポーターだけでなく、学生FD、レインボースタッフ、オリター・エンター、ライブラリースタッフ、TISA、学生広報スタッフ、ジュニアアドバイザー等など、様々な学生による学生支援組織があり、相当複雑な様相を呈しており、「これが立命館大学の学習支援体制」という分析は難しい。
<自由研究>
  自由研究は下記に参加し、情報収集を行った。自由研究に関する個々の報告は割愛する。
  1. 芝浦工業大学における学生関与のFD活動事例:SCOT学生による授業コンサルティング
  1. ボートン広瀬恵美子氏(芝浦工業大学)
  1. 多人数の意見を「十字モデル」で有機的につなぐ対話型授業のデザイン
  1. 牧野由香里氏(関西大学)
  1. 医療系学部における「コミュニケーション演習」の授業改善
  1. 奈良雅之氏(目白大学)
  1. 授業におけるPDCAサイクル理解の試み
  1. 安岡高志氏(立命館大学)
  1. 図書館ラーニングコモンズにおける学習支援の実践-大正大学の事例を通じて-
  1. 小幡誉子氏(大正大学)
  1. 学生リーダーシップに関する評価指標策定に関する考察
  1. 秦敬治氏(愛媛大学)
  1. 大学への適応を規定する要因-第2回 大学生の学習・生活に関する実態調査の分析を通して-
  1. 樋口健氏他 (ベネッセ)
  1. シナリオ講座による大学生への生活指導 ~職員と教員の協働企画~
  1. 影山陽子氏他(日本女子体育大学)
  1. 日本におけるIR人材の育成のあり方について
  1. 髙田栄一氏他(九州大学)
<まとめ>
 大学教育学会は、狭い領域の中での専門家による専門家のための学会とは一線を画し、高等教育全般を取り扱う学会である。世界の動向や、文科省の動向についても取り扱われる、高等教育業界人にとっては「概論」的な学会と私個人は捉えている。射程範囲が広範なため、教員だけでなく、職員の参加も多い。今回、関西勢では京都産業大学から複数の部署(含む管理部門)職員7名が参加しており、勢いを感じた。学会を終えれば、若手による勉強会で伝達研修も行うとのことである。
 本学ももっと外に目を向け、このような場に職員をもっと送り出し、切磋琢磨を促すべきではないだろうか。
 18歳人口再減少開始まで残り約5年である。
以上

※出張報告書内の各種表類は学会発表要旨集録、発表者配布資料より引用