2012年12月12日水曜日

第8回 関西大学FDフォーラム


出張報告書(別紙詳細版)

所属・職・氏名教務課 係長 村山孝道
日時・場所2012/11/7(水) 関西大学
テーマ第8回 関西大学FDフォーラム
目 的学生FDのWA!!!!の「広報」チームの学生を引率し、研修企画に役立てるため
プログラム講演
「コミュニケーション再考 -分かりやすい「伝え方」-」
 大島武氏(東京工芸大学芸術学部教授)

参加者数約80名




 出席者の7~8割は関西大学の教職員と一部学生であった。講師の大島氏は映画監督の大島渚氏のご子息。NTT社員から脱サラし、2004年から大学教員になられた。大島氏は、偏差値でいうと「全国の大学生の上澄み」が集まるNTTで勤務されていたが、人事研修などを企画運営する中で「上澄み学生」のコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力の無さに驚かれ、「あの手この手」で社員教育をされた。それが後の教育者人生のきっかけとなったとのことである。



1.講演 「コミュニケーション再考 -分かりやすい「伝え方」-」
 まず、コミュニケーションは所詮記号のやりとりであり、誤解があって当たり前であり、その例えとして、「いぬ」という言葉からのイメージをフロアから聞かれると、「動物」「ワンとなく」「家庭のペット」「可愛い」「4足歩行」「労働力」「かまれると痛い」「居る居ないの居ぬ」などと数多の回答があった。種類だけでも多様であるが、それだけでなくさらに、例えば四足歩行、動物、ワンと鳴くなど客観的・中立的に「イヌ」をとららえる人、もいれば、可愛い、家庭のペットなど、好意的に捕らえる人、逆に噛まれると痛い、などネガティブに受け止める人もいる。これが「いぬ」というのは所詮記号であり、それを発した人の立ち位置や、前後の文脈で意味はずいぶんと変わる、というのがコミュニケーションであると紹介された。曰く、「空気を読む」というのは「21世紀の大発明」で、この「空気を読む」という言葉のおかげで21世紀人は20世紀の人間のように「コミュニケーションギャップはコンテキストの相違である」という難解な言葉を使わなくてすむようになった、とのこと。これはおもしろい解釈である。

 さて、氏は2003年ベスト・エデュケーター・オブ・ザ・イヤー最優秀賞を受賞(全国大学実務教育協会)されただけあって、お話がすばらしく分かりやすく、驚いた。 その「わかりやすさ」の秘密は講演中の「分かりやすく話すための8箇条」に隠されている。



第一条 大枠から話す 

相手の知りたい順で考える。 概要→詳細 、 結論→理由など。

第二条 具体的に話す 

曖昧さは誤解のもと。ニュアンスで「察してもらう」ことを期待するのはバツ

第三条 話を構造化する 

「微妙」な話はしない。あなたが「微妙」なことは聞かされる方はもっと微妙。なんでも図にできる。「図にかけない話はするな」by久恒啓一氏
プレゼンテーションの練習として、なんでも「3つの話」にとして構造化する訓練がある。

第四条 自信を持って言い切る 

時にはリスクも伴う。しかしたとえば自身をもって言い切ってくれない医者にかかりたいと思いますか?という話。

第五条 相手の反応に会わせ、ゆっくり話す

話しては知っていることを話す、聞き手は知らないことを聞く。熊本大学の授業アンケートでは「話が遅すぎる」というクレームはゼロ。最多は話が早すぎるというクレームとのこと。

第六条 相手の土俵にたって話す

そもそも「わかる」とは認知科学でいうと外からの新しい情報が自分の中の古い情報と結びついた、マッチングした時に「わかった」と感じる。なので、わからせるには結びつけなければいけない。学生に対して著作権と著作隣接権の話の時に、「美空ひばりがりんごおいわけを歌っただろ」ではだめ。無理してもエグザイルを使う。

第七条 相手になじみの無い言葉は使わない

たった一語で印象は変わる(決まってしまう)。人は話の中に「自分の知らない言葉」がでてくるとそれだけで不快な気持ちになりやすい。自分の専門を長くやっていると相手はこれはわからない。ということがわからなくなる。)

第八条 タイムマネジメントを常に意識する 

時間というのは相対的。講演の90分は耐えられるが、結婚式の乾杯の挨拶7分はとうてい耐えられない。予告して守る。「相手の時間を大切にする」姿勢も「伝える」ことの要素の一つ。




 上記をワークを交え、且つ大変分かりやすい例え話を一つ一つにつけられたのが印象的であった。全て重要であるが、特に教員は年齢差を考えずに古いネタを使い、第六条や第七条をよく破るとのこと。「たった一言で印象が決まってしまう」というのはその通りで、モチベーションが低い層ほどその傾向は強い。京都文教入門のような必修科目ではこの失敗をすると「全く聞いてくれなくなる」ということがよくある。
 また、印象的な指摘の一つに、このようなコミュニケーションのセミナーは社会人は非常に興味を持って熱心に受講するが、大学生はあまり興味を持ってくれないとのこと。それは、社会人は嫌いな人、苦手な人ともコミュニケーションをとらなければならないので必要に駆られているが、大学生はそもそも自分と合わない人とは話さないのでコミュニケーションに困る、ということが非常に少ない、ということであった。これは大変問題で、やはり厳しいやりとり、言いにくいことを言い合うやりとりなどの経験が必要である。しかし、世間の大学でここが弱い、ということであれば、本学は小規模メリットを生かし、経験の場を種々提供して経験率を上げ、競争力を高めるということも可能ではないだろうか。
 今回、12月の「学生FDのWA!!!」に向けた勉強をかねてFSDプロジェクトの学生4名を帯同した。授業としてのわかりやすさ、スムーズさに大変驚いていたことが印象的であった。なお、講演終了後の質疑の際に計4名の質問があったが、その内3名が本学の学生と職員であり、本学FSDプロジェクトの学生の意識の高さ、貪欲さが際立っていた。


以上













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