出張報告書(別紙詳細版)
所属・職・氏名 | 教務課 係長 村山孝道 |
日時・場所 | 2012/11/24(土) 中部大学 リサーチセンター |
テーマ | 第29回 私立大学職員「人間ネットワーク」 大学の使命 第2弾 『大学職員道-大学を変える、職員が変える-』 |
目 的 | ・同業他社との交流ネットワーク構築 ・SD研究 |
プログラム | 第1部 基調講演 「大学職員が『学ぶ』ということ」 中元 崇 氏 (京都大学) 第2部分科会 「2」 「自己の学びや成長を職場に生かす」 参加者数約30名 |
<まとめ>
(1)基調講演 中元 崇 氏(京都大学) 「大学職員が『学ぶ』ということ-大学院とSD-」
京都大学職員で現在京都国立近代美術館に出向中の中元氏は、本年4月から名古屋大学大学院教育発達科学研究科の博士後期課程(教育マネジメント)に通われている。今回の人間ネットワークの全体テーマ「大学職員道」の「道」の一つとして、大学院進学という選択肢の概要、強みや弱みについて、詳細な報告をいただいた。全体の論旨は、1.おとなの「学び」を考える2.なぜ大学職員が学ぶ必要があるのか3.大学職員は何をまなぶのか4.大学職員は大学院でどのように学ぶのか5.大学院での「学び」に関する諸問題、である。以下、主な論点。
- おとなの学び
- おとなの「学び」は学ぶ目的・動機が明確で「学び」の質が高い。一方、環境(職場・家庭など)との関係の難しさがある。
- おとなの「学び」は「教育機関を利用する学び」と「利用しない学び」がある。後者の方がウェイトが高い。
- サテライトキャンパス、教育訓練給付制度、特別な入試制度等の普及により、大学院の社会人の利用は活性化している。(社会人大学院研究会 2003)
- 社会人大学院が注目されている理由は、①企業内評価から企業外評価へ②若い世代の意識の変化(専門職志向)③企業内教育の限界の3つがある。(山田 2002)
- 社会人大学院進学者の47%は同じ職場で勤務を継続、53%は異なるキャリアを展望している。(吉田 2010)
- なぜ大学職員が学ぶ必要があるのか
- シングルループからダブルループへ。絶えざる課題の解決の必要性が増し、入職時のスキル+OJTでは追いつかなくなってきた。
- 「ジョブ」ではなく「身分」として雇用してきた。
- あくまで教員の補助業務という位置づけとしての定型的業務(補助員・事務員)から、調整的業務(教育研究支援、大学運営)、分析型戦略的業務(大学経営、業務企画)、創発型戦略的業務(大学全体の目標設定・達成、組織での教職共同等)へとパラダイムが移り変わってきた。
- 大学職員は何を学ぶのか
- K・K・D(勘・経験・度胸)のスタイルからの脱却のため。
- アカデミックな研究の基本的なコンセプトや方法論(お作法)を学ぶ。
- 「問題把握→課題設定→政策・企画立案→提案・合意形成・実施」というプロセスは大学院教育、特に論文執筆のプロセスと酷似。親和性が高い。
- 親和性が高いことから、大学院での学びが実務に転移できやすい。
- 一方、大学院での学びはOJTから一定程度距離があり、「理念的」であると定義され(福島 2009)、大学院の学びだけでは職務遂行の全てをカバーできない。
- 大学史・大学論は研究課題としてある程度「体系的」に学ぶことは意味がある。
- 大学院での研究歴は「教員と同じ土俵で議論」する上で有利。
- 大学職員は大学院でどのように学ぶのか
- 大学職員の受け入れを図っている大学院は下記の5大学
- 東京、名古屋、広島、桜美林、名城
- その他は公共政策系、経営管理系の大学院に学ぶ職員もいる
- 年齢は早くて25歳、遅くとも40代前半。大学院の効果は遅効的なため遅すぎても困る。しかし早過ぎると「実務との往還」効果が得られない。
- 研究テーマは幅広い。大学院の研究は「理念的」で、実務に即効性があることは少ない。どちらかと言うと、「研究作法(問題把握→課題設定→政策・企画立案→提案・合意形成・実施)」の修得の意義が大きい。
大学院進学は多くの大学職員にとって、金銭面、業務面、家庭環境面等々、諸条件が整わなければなかなか踏み出せない、「ハードルの高い」一歩である。OJTと一定程度距離のある「学び」のスタイルであり、実務即効性は低いが、研究作法の修得は職業人のフレームワーク的スキルとして意義深い。
(2)グループディスカッション 「大学職員道 ー大学を変える、職員が変えるー」
Aさん・・・柔道1年、剣道1年、弓道1年、相撲3ヶ月、なぎなた1年・・・で30年
Bさん・・・柔道30年
講師の中元氏より、どちらが武道家と感じますか?という問いがあった。ジェネラリストとスペシャリスト、というふうに言い換えられるかもしれない。基本的には大学職員はAさんのような職業スタイルであり、それゆえに世間一般から「大学職員って何をしてるの?」と思われる。「大学職員道」を考えるということは、「大学職員」という職業の特徴(他業種との差異)を把握し、その強みを活かすということに他ならない。その上で、「道」を語る上では何か一つ、得意なものを作り、狭く・深く掘り下げなければならない。
2班の「道」研究の成果は以下のとおりである。
Step1 「大学職員という職業は世間からどう見られている?」
- 用務・雑用
- 公務員に近い
- 役所的
- 気楽
- 寝ている
- 軽い
- 執事(小間使い)
- 保護されている
- 楽そう
- 甘い(一般企業の社員より下に見られる)
- そもそも興味なし
→ この結果に対してディスカッション。
- 事実ではない。
- いや、あるていど事実ではないか。
- 悔しい
Step2 「では大学職員はなぜそのように見られるのか?大学職員という職業の特徴は?」
- 売上とノルマが無い
- 教育の現場である。人が相手である。
- 怖い仕事といえる。(他者の人生を左右、無資格者が種々指導をする)
- 保護されている
- 給与が安定している
- 企業にくらべ気楽である
- NPOである
→ この結果に対してディスカッション。
- 他の職業に比べ非常に重要な職業である → 本当にそうだろうか?
- 他の職業に比べミスが許されない緊張感を伴う仕事である(他者の人生を左右) → 本当にそうだろうか?原発職員は?国家資格の専門学校は?医療従事者は?
- 気楽とみられるがそんなことはない → 本当にそうだろうか?来月の自分の職に不安を持ているか?来月の給料がいくらになるか不明な人はいるか?
Step3 「ではStep2は特徴として、その強みはなんだろうか?」
- 売上とノルマが無い
- チャレンジできる。トライアンドエラーができる。夢を見られる。
- 教育の現場である。人が相手である。
- 異文化・異世代交流がある。若くいられる。(同級生に若いと言われる率が高い)
- 怖い仕事といえる。(他者の人生を左右、無資格者が種々指導をする)
- やりがいと言える。社会的存在意義を仕事の中で意識できる。
- 保護されている
- 社会の課題解決など、崇高な目的のためにチャレンジできる。あまりコストや利益を考えなくて良い。
- 給与が安定している
- 安心して最低限の生活プラスアルファの社会人生活を送れる。
- 企業にくらべ気楽である
- 自分のためのみならず、社会のため、他者のために貢献する意欲、ゆとりが生まれる。
- NPOである
- 他者への貢献を通じて自らの成長を実現できる。
→ この結果に対してディスカッション。
- こうして見ると大学職員は魅力的な職業だ
- しかし現実は公務員との併願の滑り止め職業
- チャレンジャーの集まる職業とはなっていないのでは?
- 最低限の仕事をこなして17:00に帰る職員(ミニマム職員)も大勢いる
- 社会からの大学職員の評価は「ミニマム職員」が作っているかもしれない
Step4 「とはいうものの、大多数の職員がその特性を理解し強いを活かしているうか?」
- 活かしているのはごく一部ではないか
- 人にもよるが、同時にどの部署にいるか、その部署がゆとりがあるかないか、家庭の環境(子育て)の状況がどうか、など、一概には個々人の意識の問題、人格の問題とはいえない。
- 活かそうにも生かせない職場もありえる。
- 「風土」による。
- 性差もけっこう大きく影響すると思う。
- 自分の役職にもよる。
Step5 「では大学職員が社会から評価され、チャレンジャーが集まる活発な職業になるにはどうしたら良いか → アクションプランづくりワーク」
- 目的(遠くのゴールイメージ)
- 「給料以上に大学職員を使い切る」
- 目標(成功基準)
- 強みをわからせる
- 環境の整備(制度を完成させる)
- 風土を作り上げる(やりたいことを実現出来る制度)
- モチベーションを上げる
- 組織のコミュニケーション力を上げる
- 行うべき活動・方法
- 強みをわからせる
- 募集の時から大学職員という職業の「特徴」「強み」を公示した上で求めている人材を明確に示す。 → チャレンジャーを集める
- 既存の職員は例えば上記募集・採用および新人研修を担当する(Teaching)ことを通じて「特徴」「強み」を理解させる。
- 環境の整備(制度を完成させる)
- プロジェクト型業務の制度を作る
- コモンスペース(コーヒースペース)を作ってアイデアの創発性を高める
- 風土を作り上げる(やりたいことを実現出来る制度)
- 飲みニケーション?
- モチベーションを上げる
- 学生からありがとうと言われる → 先にありがとうを言う
- 組織のコミュニケーション力を上げる
- 一日一笑制度を実施する
まとまった時間をとって、様々な大学の職員達と改めて「大学職員」という職業を振り返り、議論し、再発見した機会は大変貴重であった。特徴と強みを理解し、強みを活かして職場の活性化、あるいはこの職業自体の活性化に貢献をしたい、と改めて感じた。
以 上
0 件のコメント:
コメントを投稿