2012年12月12日水曜日

第29回 私立大学職員「人間ネットワーク」  大学の使命 第2弾 『大学職員道-大学を変える、職員が変える-』


出張報告書(別紙詳細版)

所属・職・氏名教務課 係長 村山孝道
日時・場所2012/11/24(土) 中部大学 リサーチセンター
テーマ第29回 私立大学職員「人間ネットワーク」
 大学の使命 第2弾 『大学職員道-大学を変える、職員が変える-』
目 的・同業他社との交流ネットワーク構築
・SD研究
プログラム第1部 基調講演
「大学職員が『学ぶ』ということ」
 中元 崇 氏 (京都大学)

第2部分科会 「2」
「自己の学びや成長を職場に生かす」

参加者数約30名


<まとめ>
 
(1)基調講演 中元 崇 氏(京都大学)  「大学職員が『学ぶ』ということ-大学院とSD-」
 京都大学職員で現在京都国立近代美術館に出向中の中元氏は、本年4月から名古屋大学大学院教育発達科学研究科の博士後期課程(教育マネジメント)に通われている。今回の人間ネットワークの全体テーマ「大学職員道」の「道」の一つとして、大学院進学という選択肢の概要、強みや弱みについて、詳細な報告をいただいた。全体の論旨は、1.おとなの「学び」を考える2.なぜ大学職員が学ぶ必要があるのか3.大学職員は何をまなぶのか4.大学職員は大学院でどのように学ぶのか5.大学院での「学び」に関する諸問題、である。以下、主な論点。

  • おとなの学び
    • おとなの「学び」は学ぶ目的・動機が明確で「学び」の質が高い。一方、環境(職場・家庭など)との関係の難しさがある。
    • おとなの「学び」は「教育機関を利用する学び」と「利用しない学び」がある。後者の方がウェイトが高い。
    • サテライトキャンパス、教育訓練給付制度、特別な入試制度等の普及により、大学院の社会人の利用は活性化している。(社会人大学院研究会 2003)
    • 社会人大学院が注目されている理由は、①企業内評価から企業外評価へ②若い世代の意識の変化(専門職志向)③企業内教育の限界の3つがある。(山田 2002)
    • 社会人大学院進学者の47%は同じ職場で勤務を継続、53%は異なるキャリアを展望している。(吉田 2010)

  • なぜ大学職員が学ぶ必要があるのか
    • シングルループからダブルループへ。絶えざる課題の解決の必要性が増し、入職時のスキル+OJTでは追いつかなくなってきた。
    • 「ジョブ」ではなく「身分」として雇用してきた。
    • あくまで教員の補助業務という位置づけとしての定型的業務(補助員・事務員)から、調整的業務(教育研究支援、大学運営)、分析型戦略的業務(大学経営、業務企画)、創発型戦略的業務(大学全体の目標設定・達成、組織での教職共同等)へとパラダイムが移り変わってきた。

  • 大学職員は何を学ぶのか
    • K・K・D(勘・経験・度胸)のスタイルからの脱却のため。
    • アカデミックな研究の基本的なコンセプトや方法論(お作法)を学ぶ。
    • 「問題把握→課題設定→政策・企画立案→提案・合意形成・実施」というプロセスは大学院教育、特に論文執筆のプロセスと酷似。親和性が高い。
    • 親和性が高いことから、大学院での学びが実務に転移できやすい。
    • 一方、大学院での学びはOJTから一定程度距離があり、「理念的」であると定義され(福島 2009)、大学院の学びだけでは職務遂行の全てをカバーできない。
    • 大学史・大学論は研究課題としてある程度「体系的」に学ぶことは意味がある。
    • 大学院での研究歴は「教員と同じ土俵で議論」する上で有利。

  • 大学職員は大学院でどのように学ぶのか
    • 大学職員の受け入れを図っている大学院は下記の5大学
      • 東京、名古屋、広島、桜美林、名城 
      • その他は公共政策系、経営管理系の大学院に学ぶ職員もいる
    • 年齢は早くて25歳、遅くとも40代前半。大学院の効果は遅効的なため遅すぎても困る。しかし早過ぎると「実務との往還」効果が得られない。
    • 研究テーマは幅広い。大学院の研究は「理念的」で、実務に即効性があることは少ない。どちらかと言うと、「研究作法(問題把握→課題設定→政策・企画立案→提案・合意形成・実施)」の修得の意義が大きい。

 大学院進学は多くの大学職員にとって、金銭面、業務面、家庭環境面等々、諸条件が整わなければなかなか踏み出せない、「ハードルの高い」一歩である。OJTと一定程度距離のある「学び」のスタイルであり、実務即効性は低いが、研究作法の修得は職業人のフレームワーク的スキルとして意義深い。

(2)グループディスカッション 「大学職員道 ー大学を変える、職員が変えるー」
 
  Aさん・・・柔道1年、剣道1年、弓道1年、相撲3ヶ月、なぎなた1年・・・で30年
  Bさん・・・柔道30年

 講師の中元氏より、どちらが武道家と感じますか?という問いがあった。ジェネラリストとスペシャリスト、というふうに言い換えられるかもしれない。基本的には大学職員はAさんのような職業スタイルであり、それゆえに世間一般から「大学職員って何をしてるの?」と思われる。「大学職員道」を考えるということは、「大学職員」という職業の特徴(他業種との差異)を把握し、その強みを活かすということに他ならない。その上で、「道」を語る上では何か一つ、得意なものを作り、狭く・深く掘り下げなければならない。
 2班の「道」研究の成果は以下のとおりである。

Step1  「大学職員という職業は世間からどう見られている?」
  • 用務・雑用
  • 公務員に近い
  • 役所的
  • 気楽
  • 寝ている
  • 軽い
  • 執事(小間使い)
  • 保護されている
  • 楽そう
  • 甘い(一般企業の社員より下に見られる)
  • そもそも興味なし

 → この結果に対してディスカッション。
  • 事実ではない。
  • いや、あるていど事実ではないか。
  • 悔しい

Step2 「では大学職員はなぜそのように見られるのか?大学職員という職業の特徴は?」
  • 売上とノルマが無い
  • 教育の現場である。人が相手である。
  • 怖い仕事といえる。(他者の人生を左右、無資格者が種々指導をする)
  • 保護されている
  • 給与が安定している
  • 企業にくらべ気楽である
  • NPOである

→ この結果に対してディスカッション。
  • 他の職業に比べ非常に重要な職業である → 本当にそうだろうか?
  • 他の職業に比べミスが許されない緊張感を伴う仕事である(他者の人生を左右) → 本当にそうだろうか?原発職員は?国家資格の専門学校は?医療従事者は?
  • 気楽とみられるがそんなことはない → 本当にそうだろうか?来月の自分の職に不安を持ているか?来月の給料がいくらになるか不明な人はいるか?

Step3 「ではStep2は特徴として、その強みはなんだろうか?」
  • 売上とノルマが無い
    • チャレンジできる。トライアンドエラーができる。夢を見られる。
  • 教育の現場である。人が相手である。
    • 異文化・異世代交流がある。若くいられる。(同級生に若いと言われる率が高い)
  • 怖い仕事といえる。(他者の人生を左右、無資格者が種々指導をする)
    • やりがいと言える。社会的存在意義を仕事の中で意識できる。
  • 保護されている
    • 社会の課題解決など、崇高な目的のためにチャレンジできる。あまりコストや利益を考えなくて良い。
  • 給与が安定している
    • 安心して最低限の生活プラスアルファの社会人生活を送れる。
  • 企業にくらべ気楽である
    • 自分のためのみならず、社会のため、他者のために貢献する意欲、ゆとりが生まれる。
  • NPOである
    • 他者への貢献を通じて自らの成長を実現できる。

→ この結果に対してディスカッション。
  • こうして見ると大学職員は魅力的な職業だ
  • しかし現実は公務員との併願の滑り止め職業
  • チャレンジャーの集まる職業とはなっていないのでは?
  • 最低限の仕事をこなして17:00に帰る職員(ミニマム職員)も大勢いる
  • 社会からの大学職員の評価は「ミニマム職員」が作っているかもしれない


Step4  「とはいうものの、大多数の職員がその特性を理解し強いを活かしているうか?」
  • 活かしているのはごく一部ではないか
  • 人にもよるが、同時にどの部署にいるか、その部署がゆとりがあるかないか、家庭の環境(子育て)の状況がどうか、など、一概には個々人の意識の問題、人格の問題とはいえない。
  • 活かそうにも生かせない職場もありえる。
  • 「風土」による。
  • 性差もけっこう大きく影響すると思う。
  • 自分の役職にもよる。

Step5  「では大学職員が社会から評価され、チャレンジャーが集まる活発な職業になるにはどうしたら良いか → アクションプランづくりワーク」
  • 目的(遠くのゴールイメージ)
    • 「給料以上に大学職員を使い切る」
  • 目標(成功基準)
    • 強みをわからせる
    • 環境の整備(制度を完成させる)
    • 風土を作り上げる(やりたいことを実現出来る制度)
    • モチベーションを上げる
    • 組織のコミュニケーション力を上げる
  • 行うべき活動・方法
    • 強みをわからせる
      • 募集の時から大学職員という職業の「特徴」「強み」を公示した上で求めている人材を明確に示す。 → チャレンジャーを集める
      • 既存の職員は例えば上記募集・採用および新人研修を担当する(Teaching)ことを通じて「特徴」「強み」を理解させる。
    • 環境の整備(制度を完成させる)
      • プロジェクト型業務の制度を作る
      • コモンスペース(コーヒースペース)を作ってアイデアの創発性を高める
    • 風土を作り上げる(やりたいことを実現出来る制度)
      • 飲みニケーション?
    • モチベーションを上げる
      • 学生からありがとうと言われる → 先にありがとうを言う
    • 組織のコミュニケーション力を上げる
      • 一日一笑制度を実施する

 まとまった時間をとって、様々な大学の職員達と改めて「大学職員」という職業を振り返り、議論し、再発見した機会は大変貴重であった。特徴と強みを理解し、強みを活かして職場の活性化、あるいはこの職業自体の活性化に貢献をしたい、と改めて感じた。


以 上

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